腰痛

原因がわからない腰痛の正体|非特異的腰痛という考え方

編集:株式会社藤井翔悟事務所|公開 2026.08.18編集方針

整形外科でレントゲンやMRIを撮ったのに「特に異常は見当たりません」と言われた経験はありませんか。丹波篠山に暮らしていると、黒豆や稲作の農作業での中腰姿勢、篠山口からの長距離通勤、山間部の移動に欠かせない車の運転など、腰に負担がかかる場面は日常のあちこちにあります。それでも検査に何も映らず「原因が分からない」と告げられると、痛みそのものよりも、むしろその不安が長く尾を引くことがあります。

「もっと深刻な病気が隠れているのではないか」「自分の痛みは気のせいなのか」——こうした疑念を抱える方は少なくありません。このページでは、「原因が分からない腰痛」の正体と呼ばれる非特異的腰痛(ひとくいてきようつう)について、現在の研究で明らかになっていることを正直にお伝えします。

この記事で分かること

腰痛の約85%は「非特異的腰痛」に分類されます。これは「原因がない」という意味ではなく、「現在の画像検査では原因を一か所に特定しにくい」という状態です(日本整形外科学会・腰痛診療ガイドライン2019)。

  • 非特異的腰痛とは何か、なぜ画像に映らないのか
  • なぜ長引くのか——「痛む場所」と「原因の場所」が違う理由
  • やってはいけない対処と、自宅でできること
  • 当院が「原因の場所」を探す考え方

非特異的腰痛の正体

腰痛は大きく2つに分類されます。一方は特異的腰痛——椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折、腫瘍、感染症など、画像や検査で原因を特定できるものです。腰痛全体のおよそ15%程度とされています。

もう一方が非特異的腰痛で、腰痛全体の約85%を占めます。日本整形外科学会と日本腰痛学会が監修した「腰痛診療ガイドライン2019」は、非特異的腰痛を「椎間板・椎間関節の加齢変性、体幹筋の疲労や拘縮、軟部組織の硬縮など複数の因子が複雑に絡み合って発症する腰痛」と定義しています。

特異的腰痛 約 15% 画像検査で原因を特定できる ・椎間板ヘルニア ・脊柱管狭窄症 ・圧迫骨折 ・腫瘍・感染症 など VS 非特異的腰痛 約 85% 画像では映りにくい原因が複合する ・筋・筋膜の滑走不全 ・椎間関節・靭帯の緊張 ・椎間板の軽微な変性 ・心理・社会的因子の関与
図1:腰痛の2分類。腰痛全体の約85%は非特異的腰痛で、画像で原因を一つに特定することが難しい。(日本整形外科学会・腰痛診療ガイドライン2019をもとに作成)

なぜ画像に映らないのか

筋肉・筋膜・腱・靭帯などの「軟部組織」は、レントゲンではほぼ確認できません。MRIで評価できる場合もありますが、変化が軽微であれば正常範囲として判断されることがあります。一方、これらの組織には豊富な神経終末(侵害受容器)が存在しており、微細な変化でも痛みとして感じられることがあります。

また、発痛点(トリガーポイント)という概念があります。筋や筋膜の中に過剰に緊張した結節が生じ、そこに圧迫などの刺激が加わると、離れた部位に痛みが広がる(関連痛)というパターンです。たとえば殿部の筋肉のトリガーポイントが、腰の深部の痛みとして感じられることがあります。このような関連痛のパターンは、画像では確認できません。

腰部の組織横断面イメージ 皮下組織 胸腰筋膜 多裂筋 最長筋(傍脊柱筋) 神経(脊髄) 椎体(腰椎) ※模式図。実際の解剖を簡略化したものです
図2:腰部の横断面イメージ。骨(椎体)を囲む筋・筋膜・神経の層には多くの侵害受容器があるが、MRI等の画像では変化を捉えにくいことがある。

なぜ腰痛は長引くのか

「痛む場所」と「原因の場所」は別であることがある

腰の後ろが痛いからといって、原因が腰の後ろにあるとは限りません。当院の経験では、腰部の痛みを訴える方の中に、股関節の可動域の低下や殿部の筋の拘縮が関与しているケースが少なくありません。股関節が硬いと、腰椎が代わりに動きを補い、結果的に腰部の特定の組織が繰り返し負荷を受け続けます。

また、胸椎(背中の中央から上)の動きが低下している場合、腰椎が過剰に動かされ、同様に負荷が集中することがあります。これは農作業や車の運転など、特定の姿勢を長時間続ける方に多く見られるパターンです。

痛みを感じる場所 腰部 腰の後面に痛みを感じる 原因が関与しうる場所 胸椎の可動低下 (背中の動きが硬い) 股関節の拘縮 (足の付け根が硬い) 殿部の筋の拘縮 (お尻の筋が硬い)
図3:「痛む場所」と「原因の場所」は必ずしも一致しない。腰が痛くても、股関節や胸椎の問題が腰に負担をかけているケースがある。

生物・心理・社会の3つの要因が絡み合う

腰痛の研究では、痛みを「生物学的」「心理学的」「社会的」3つの要因が絡み合うものとして捉える生物心理社会モデル(biopsychosocial model)が広く支持されています。Otero-Kettererらの2022年のumbrella reviewによると、急性・亜急性の非特異的腰痛が慢性化する予測因子として、高い痛みの強度・感情的苦痛・回復への否定的な期待・職場での高い身体的負荷、の4つが一貫して関連していることが報告されています。

丹波篠山での暮らしに当てはめると、農作業の繁忙期や繰り返しの中腰動作(生物学的要因)に加え、「畑を休めない」「痛みが続いても受診する時間がない」といったプレッシャー(社会的要因)、「これ以上悪くなったらどうしよう」という不安(心理的要因)が重なることで、腰痛が長引きやすくなると考えられます。

生物心理社会モデル:腰痛を長引かせる3つの要因 生物学的 ・筋の過緊張・拘縮 ・筋膜の滑走不全 ・椎間板・椎間関節の変性 ・繰り返しの中腰作業 ・中枢性感作の関与 心理的 ・痛みへの恐怖・回避 ・破局的思考 ・回復への否定的な期待 ・ストレス・抑うつ ・感情的苦痛 社会的 ・農繁期の休めない状況 ・職場での高い身体負荷 ・受診できない時間的制約 ・家族・介護の負担 ・人間関係のストレス 3つが重なるほど、腰痛は長引きやすくなると考えられています
図4:生物心理社会モデル。腰痛の慢性化には身体的な要因だけでなく、心理的・社会的な要因も関与していることが研究で示されている。

やってはいけないこと

非特異的腰痛に対してよく見られる逆効果な対処をまとめます。当てはまるものがあれば、まず変えることから始めてみてください。

1. 「安静にしていれば治る」と思って長期間寝込む
急性期(痛みが出て1〜2日)は無理な動きを控えることが大切ですが、それ以降の長期臥床は逆効果です。筋肉が弱まり、血流が滞り、痛みへの恐怖感が増すことが分かっています。腰痛診療ガイドラインでも、急性期後の早期からの活動再開が推奨されています。

2. 痛い場所だけをマッサージし続ける
腰の後面をその場でほぐすと一時的に楽になりますが、原因が股関節や胸椎にある場合は根本が変わらないため、翌日にはまた戻ります。「揉んでも戻る」を繰り返している方は、痛む場所ではなく別の場所に原因がある可能性を考えてみてください。

3. 「画像で異常なし」を信じて痛みを放置する
「異常なし」は「治療不要」ではありません。非特異的腰痛でも適切なアプローチを取ることで、日常生活への支障を減らせる例があります。半年以上続く腰痛を「気のせい」と判断して放置することは、慢性化のリスクを高めます。

4. 強い痛みをかばう姿勢を長続きさせる
痛みから身を守ろうとする「かばい動作」は自然な反応ですが、長期化すると周辺の筋肉が過剰に緊張し、かえって痛みの範囲が広がることがあります。できる範囲で自然な姿勢を保つことが大切です。

受診をおすすめするサイン

以下のいずれかがある場合は、施術院への相談より先に、まず医療機関(整形外科・内科)を受診してください。これらは「レッドフラッグ」と呼ばれ、骨折・腫瘍・感染症・神経疾患など、緊急性の高い原因が隠れている可能性があります。

⚠ 受診をおすすめするサイン(レッドフラッグ) □ 発熱(37.5°C以上)を伴う腰痛 □ 理由のない体重減少(1か月で数kg) □ 排尿・排便のコントロールが突然難しくなった □ 両足のしびれ・脱力が同時に起きている □ 安静にしていても夜間に強い痛みがある □ 転倒・事故などの外傷後に突然痛みが出た □ ステロイドや免疫抑制剤を長期服用している 上記がある場合、施術院ではなくまず医療機関へ。
図5:受診をすすめるサイン(レッドフラッグ)。これらに該当する場合は速やかに整形外科・内科を受診してください。

上記に当てはまらない腰痛で、痛みが3か月以上続いている、または日常生活に支障が出ている場合は、丹波篠山で腰痛にお悩みの方へのページもあわせてご覧ください。

自分でできること

レッドフラッグに該当せず、医療機関で重篤な疾患を除外できている方向けに、日常でできることをまとめます。効果には個人差がありますので、痛みが増す場合はすぐに中止してください。

1. 「安静より動き」を意識する

非特異的腰痛では、恐怖を感じない範囲で体を動かし続けることが長期的に有益とされています。歩行は腰椎周辺の血流を高め、筋の萎縮を防ぐ効果が期待されます。まずは1日10〜15分程度の平地ウォーキングから始め、痛みの変化を確認しながら少しずつ増やすことを目標にしてください。

2. 股関節・腸腰筋のストレッチ

腸腰筋(ちょうようきん)は股関節を前に引き寄せる筋肉で、長時間の座位や車の運転で短縮しやすい筋肉です。この筋肉が硬くなると骨盤が前に倒れ(骨盤前傾)、腰椎の反りが強くなって腰部への負担が増します。以下の手順でストレッチを試してみてください。

やり方(各側 30秒 × 2回)

  1. 床に片ひざをついた状態(ランジポジション)をとる。前脚は膝が90度になるように置く
  2. 背筋を伸ばしたまま、骨盤をまっすぐ前方へ押し出す(上体を前に傾けない)
  3. 後ろ脚の付け根の前側に伸びを感じたら、そのまま30秒保つ
  4. 息を吐きながらリラックスする。呼吸を止めない

腰が反りすぎると痛みが増すことがあります。腰を「丸めすぎず・反りすぎず」の自然な位置を保ちながら行ってください。

腸腰筋が短縮した状態 骨盤 前傾 腰椎が 反りやすい 腸腰筋(短縮) → 腰への負担が増加 ストレッチで伸ばした状態 骨盤 水平を保つ 腰椎の 反りが和らぐ 腸腰筋(伸展) → 腰部への負担が分散
図6:腸腰筋の短縮(左)と、ストレッチで伸ばした状態(右)の対比。腸腰筋が硬いと骨盤が前傾し、腰椎への負担が集中しやすい。

3. 深呼吸で体幹のインナーマッスルを整える

横隔膜(おうかくまく)は呼吸に関わる筋肉ですが、同時に腹腔内圧を高めて脊柱を安定させる「コアの天井」とも呼ばれます。呼吸が浅くなると横隔膜の動きが制限され、腰椎の安定に関わる筋肉(多裂筋・腹横筋)が働きにくくなると考えられています。

意識して鼻から4秒かけて吸い、口から6秒かけてゆっくり吐く腹式呼吸を、1日3〜5分取り入れてみてください。農作業や運転の休憩時間に行うだけでも、緊張した体幹をリセットする助けになります。

4. 睡眠と痛みの関係を意識する

睡眠不足や睡眠の質の低下は、痛みへの敏感さ(痛覚閾値の低下)と関連することが報告されています。特に腰痛が慢性化している方では、痛みが眠れない原因になり、眠れないことがさらに痛みを増幅させるという悪循環が起きやすいです。横向きに寝るときは、膝の間にクッションを挟むと腰部の回旋ストレスを減らせます。

当院の考え方

「非特異的腰痛と言われた」「画像に異常がなかった」という方が当院を訪ねてこられることがあります。当院では問診と徒手による評価を通じて、「痛む場所」ではなく「原因が関与している場所」を探すことを重視しています。

具体的には、股関節・胸椎・骨盤の可動域、筋・筋膜の状態、日常的な動作パターンを丁寧に評価します。農作業の種類や時期、車の乗り方、日々の姿勢なども伺います。丹波篠山の暮らしに特有の動作や負荷のパターンは、当院が特に力を入れて確認している部分です。

施術では、藤井翔悟(理学療法士)の技術をもとに、原因と考えられる場所への筋膜アプローチと関節の動きの改善を組み合わせます。ただし、施術の効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が出ることをお約束することはできません。改善の程度は、痛みの期間・年齢・生活習慣・心理社会的な要因によって異なります。

詳しい施術の流れや料金については、ご予約・施術の流れをご覧いただくか、お電話(075-748-1410)でお気軽にお問い合わせください。所在地の詳細はご予約時にご案内します。

よくある質問

Q. 画像で「異常なし」と言われました。痛みは気のせいなのでしょうか。

まったくそんなことはありません。非特異的腰痛は「画像に映らない原因による、本物の痛み」です。筋・筋膜・靭帯・椎間関節の被膜などには豊富な神経終末があり、MRIで判読できる変化がなくても、これらの組織の状態が痛みの原因になり得ます。「異常なし」は「原因がない」ではなく「この検査では特定できなかった」という意味だとご理解ください。

Q. 非特異的腰痛は自然に良くなりますか。

急性の非特異的腰痛の多くは、数週間以内に自然と軽快することが報告されています。一方、痛みが3か月以上続く慢性期になると、自然経過だけでの改善は見込みにくくなり、生活への支障が続く例があります。3か月を目安に、変化がなければ専門家への相談を検討してください。また、生物心理社会的な要因(ストレス・睡眠不足・恐怖回避など)が重なっている場合は、早めの対応が慢性化の予防につながると考えられています。

Q. 何年も腰痛が続いています。今からでも変わりますか。

慢性腰痛の方でも、動作パターンや原因の場所へのアプローチを変えることで、日常生活の不便さが軽減される例があります。当院の経験では、数年来の腰痛を抱えていた方が、原因の場所(股関節や胸椎)への施術と自宅でのセルフケアを組み合わせることで変化を感じたケースがありました。ただし効果の出方には個人差があり、年単位の経過を要することもあります。「今からでも遅くはないか」という気持ちでぜひご相談ください。

まとめ

「原因が分からない腰痛」の約85%は非特異的腰痛です。これは画像に映らない原因(筋・筋膜の状態、発痛点、生物心理社会的な要因)が複合して起きているものであり、「痛みは本物」です。痛む場所と原因の場所が異なることが多く、長期安静や痛い場所だけをターゲットにする対処では改善しにくいことが知られています。

まずはレッドフラッグがないことを確認し、医療機関で重篤な疾患を除外してから、生活習慣の見直しや適切なセルフケアを取り入れることが大切です。当院では、腰痛でお悩みの方のご相談を、丹波篠山の暮らしに沿った視点でお受けしています。

ご予約は完全予約制です。まずはお電話(075-748-1410)またはお問い合わせフォームよりご連絡ください。

  1. 日本整形外科学会・日本腰痛学会(監修). 腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版. 南江堂, 2019.
  2. Iizuka Y, Iizuka H, Mieda T, et al. Prevalence of Chronic Nonspecific Low Back Pain and Its Associated Factors among Middle-Aged and Elderly People: An Analysis Based on Data from a Musculoskeletal Examination in Japan. Asian Spine J. 2017;11(6):989-997.
  3. Otero-Ketterer E, Peñacoba-Puente C, Ferreira Pinheiro-Araujo C, et al. Biopsychosocial Factors for Chronicity in Individuals with Non-Specific Low Back Pain: An Umbrella Review. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(16):10145.

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療など医療行為に代わるものではありません。施術の効果には個人差があります。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。

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