産後に腰が痛い——丹波篠山でも多いご相談です
生後数週間の赤ちゃんを抱きながら、腰の重さや骨盤まわりのだるさを感じている方は少なくありません。丹波篠山や周辺の丹波市・三田市から来院される方の中にも、「産後から腰が痛くて育児がつらい」「布団から起き上がるのがしんどい」「抱っこのたびに骨盤まわりがズキズキする」という悩みをお持ちの方がいます。
産後の体は妊娠前と異なる状態にあります。ホルモンの影響で骨盤まわりの靭帯が緩み、出産で骨盤底筋が引き伸ばされ、授乳・抱っこ・おむつ替えといった育児動作が繰り返されます。この変化を理解すると、「いつから何をすればよいか」という対処の道筋が見えてきます。
この記事では、産後の腰痛と骨盤帯痛の原因を解剖学的に整理し、自宅でできるケアと受診の判断基準を正直にお伝えします。
妊娠後期
産後(靭帯弛緩が続く時期)
仙腸関節
恥骨結合
リラキシン分泌中
靭帯が弛緩した状態
産後3か月以内に約93%が自然改善
(Wu et al., European Spine J. 2004)
図1. 妊娠後期と産後の骨盤帯の変化。金色の仙腸関節は靭帯弛緩の影響を受けやすく、産後も痛みが出やすい場所。
兵庫県丹波篠山市|完全予約制
読むだけでは変わらない痛みは、一度ご相談ください
藤井翔悟治療院 丹波篠山院では、テレビ・医師向けメディアに出演する理学療法士 藤井翔悟の筋膜アプローチで、 痛む場所ではなく“原因の場所”から整えます。初回 2,980円/営業時間 10:00〜17:00(完全予約制)。
この記事でわかること
産後の腰痛には「腰椎由来」と「骨盤帯痛」の2系統があり、原因の場所が異なること
リラキシンというホルモンが靭帯を緩め、産後しばらく続くこと
研究では産後の骨盤帯痛の約93%が3か月以内に改善するが、約25%は産後も続くと報告されていること
急激な腹筋運動・強い骨盤矯正が逆効果になりやすいこと
骨盤底筋のブリージングとバードドッグが自宅でできる基本のケアであること
すぐに受診すべき症状(レッドフラッグ)の見分け方
施術の効果には個人差があります。以下の内容は一般的な情報であり、診断・治療行為の代わりにはなりません。
産後の腰痛・骨盤帯痛の正体
2つの系統を分けて考える
産後の腰痛は大きく2系統に分けられます。混在することも多く、どちらが主体かを区別することが対処の第一歩になります。
①腰椎(ようつい)由来の腰痛 腰の背骨(第1〜第5腰椎)まわりの筋肉・椎間板・関節に負担がかかって起きるもの。妊娠中に増えた体重や、お腹が大きくなるにつれて腰を反らした姿勢が続いた影響が、産後も残ることがあります。腰の中央から少し上、背骨のラインに沿って痛むことが多いのが特徴です。
②骨盤帯痛(こつばんたいつう) 骨盤の左右にある仙腸関節(せんちょうかんせつ)や、正面中央にある恥骨結合(ちこつけつごう)に痛みが出るもの。お尻の上のくぼみ付近・股のつけ根・恥骨のあたりが痛む場合は、こちらが関わっていることが多いと考えられています。
骨盤の構造(後面から)
腰椎
仙腸関節
腸骨(左)
腸骨(右)
仙骨
金色の部分(仙腸関節)= 産後に痛みが出やすい場所
図2. 骨盤の後面図。仙腸関節は腸骨と仙骨の間にある関節で、本来わずかしか動かないが、靭帯弛緩によって過剰に動くと痛みが生じやすい。
リラキシンと靭帯弛緩
なぜ産後に骨盤帯が痛むのでしょうか。妊娠中、胎盤や黄体からリラキシンというホルモンが分泌されます。リラキシンは骨盤まわりの靭帯をやわらかくし、出産時に赤ちゃんが産道を通りやすくするために働きます。このホルモンの作用は産後もすぐには消えず、靭帯の弛緩がしばらく続くことがあります。
靭帯が緩んだ状態では、骨盤の各骨がバラバラに動きやすくなります。特に仙腸関節は本来わずかしか動かない関節ですが、靭帯弛緩によって過剰に動くようになると、関節まわりの筋肉が余分に緊張して痛みが出やすくなると考えられています。
骨盤底筋の機能低下
体幹の安定に欠かせない骨盤底筋(こつばんていきん)は、骨盤の底にハンモック状に張り渡された筋肉群です。膀胱・子宮・直腸を下から支え、腹圧を受け止める役割を担っています。経腟分娩では、この骨盤底筋が大きく引き伸ばされます。骨盤底筋の機能が低下すると骨盤の安定性が下がり、腰や仙腸関節への負担が増すと考えられています。
腹直筋離開
妊娠中にお腹が大きくなると、おへその縦のラインにある白線(はくせん)が引き伸ばされ、左右の腹直筋の間が開いた状態(腹直筋離開)が残ることがあります。腹直筋離開があると体幹の安定性が低下し、腰・骨盤への負担が増すと考えられています。仰向けで頭を持ち上げたとき、おへその縦ラインがプクッと浮き出るように見える場合は、腹直筋離開の可能性があります。
痛む場所(感じる痛み)
原因の場所(問題の本体)
腰(背骨まわり)
お尻・骨盤まわり
← 痛みを感じる場所
仙腸関節
骨盤底筋
← 原因が潜む場所
図3. 「痛む場所」と「原因の場所」は異なることが多い。腰やお尻の痛みでも、原因は仙腸関節や骨盤底筋にある場合がある。
なぜ産後の腰痛は長引くのか
European Spine Journalに掲載されたWuらの研究(2004年)では、妊娠・産後の骨盤帯痛の約93%は産後3か月以内に自然に消失すると報告されています。一方で、産後も骨盤帯痛が続く女性は全体の約25%という報告もあり、一定数の方は長引く経過をたどります。
要因① 動き方の習慣化
痛みを避けようとして無意識に体をかばい続けると、特定の筋肉ばかりに負担が集中します。「腰が痛いからお尻をかばう→お尻の筋肉が過緊張する→仙腸関節に余分なストレスがかかる→また痛む」というサイクルが繰り返されやすくなります。痛む場所と原因の場所が違うことが多いため、痛む場所だけをケアしても改善が見えにくい場合があります。
要因② 育児動作の繰り返し
抱っこ・授乳・おむつ替えといった育児動作は、前かがみや腰を反らす姿勢を1日に何十回も繰り返す行為です。骨盤が安定していない時期に同じ動きを長時間続けると、回復を妨げます。当院の経験では、授乳姿勢をほんの少し変えるだけで腰の負担が明らかに変わる方が多い印象があります。
要因③ 睡眠不足と慢性疲労
新生児期の睡眠不足は避けがたいものですが、睡眠が不足すると筋肉の修復が追いつかず、痛みへの感覚が過敏になりやすいと考えられています。産後うつとの合併も報告されており、痛みの慢性化には心理的な因子も関わる場合があると考えられています。
痛みが長引くサイクル
骨盤帯の痛み
体をかばう動き
特定の筋肉に
負担が偏る
仙腸関節への
余分なストレス
このサイクルを断つことが、産後の腰痛改善の鍵となる
図4. 産後の腰痛が長引く典型的なサイクル。痛む場所だけをケアしてもサイクルが断てないことが多い。
やってはいけないこと
産後の腰痛・骨盤帯痛でよく見られる逆効果な対処を整理します。善意からくる行動でも、時期によっては回復を遅らせることがあります。
強い揉みほぐし・強い骨盤矯正
靭帯が弛緩している産後早期に、骨盤まわりを強く圧したり大きな力でねじったりすると、関節の不安定性が増す可能性があります。「骨盤を矯正する」と言って骨盤を大きく動かすような施術は、産後の不安定な時期には特に慎重さが必要です。施術を受ける場合は産後何か月かを伝え、施術者と十分に相談してください。
骨盤ベルトの過信
骨盤ベルトは適切に使うと仙腸関節の安定を助けるとされていますが、きつく締めすぎたり長時間外さなかったりすると、骨盤底筋への血流が悪くなる可能性があります。ベルトに頼りすぎることで骨盤まわりの筋肉を自分で使わなくなると、体幹の筋力回復が遅れることがあります。
急激な腹筋運動(クランチなど)
腹直筋離開が残っている時期に、仰向けで頭を持ち上げるような腹筋運動を行うと、白線にかかる張力が増し、離開が広がる可能性があります。産後の腹部トレーニングは、まず骨盤底筋と深層腹筋の協調を回復させることから始めることが重要と考えられています。
完全な安静
「痛いから動かない」というサイクルは、筋力低下・血流悪化を招き、回復をかえって遅らせることがあります。痛みに応じた適度な動きを続けることが重要と考えられています。ただし、無理は禁物で、あくまで痛みの許容範囲での活動が前提です。
すぐに受診をおすすめするサイン(レッドフラッグ)
以下の症状がある場合は、整体・治療院に来る前に、産婦人科・整形外科・内科を受診してください。
発熱を伴う腰や骨盤の痛み ——感染症(産褥熱・骨髄炎)の可能性があります
排尿・排便に急な異常がある ——尿失禁が急に悪化した、便が出ない、尿が出ない
足のしびれや脱力が強く、悪化している ——神経の圧迫が疑われます
夜間、安静にしていても強い痛みがある ——腫瘍・感染症の可能性があります
産後の出血が続いている・急に増えた ——産褥出血の異常の可能性があります
腰やお尻を打撲した後に強い痛みが出た ——骨折の可能性があります
産後は子宮の回復・骨盤底筋のダメージなど、整体では対応できない問題が隠れている場合があります。気になるサインがある場合は遠慮せず、産婦人科または整形外科に相談してください。
骨盤底筋の断面(下から見た模式図)
骨盤底筋群
尿道口
腟
肛門
骨盤底筋はハンモック状に骨盤の底を支え、腹圧と骨盤の安定に関わる
図5. 骨盤底筋の模式図(下面から)。赤紫色の筋線維がハンモック状に骨盤底を形成し、膀胱・子宮・直腸を支える。経腟分娩で引き伸ばされやすい。
自分でできること
以下は産後の腰痛・骨盤帯痛の方が自宅で試せるケアです。いずれも痛みが強い時期や産後直後は無理をせず、痛みを感じたら中止してください。産婦人科の1か月健診で問題がないと確認してからの実践をおすすめします。
① 骨盤底筋のブリージングエクササイズ
骨盤底筋と横隔膜の協調を取り戻す基本の動きです。
仰向けに寝て膝を立てます。足は腰幅に開き、肩・腰・足がリラックスした状態にします。
鼻からゆっくり息を吸いながら、胸とお腹(特に下腹部)を自然に膨らませます。このとき骨盤底筋は緩めます。
口からゆっくり息を吐きながら、会陰部(えいいんぶ:股の間)を軽くすぼめ、引き上げるイメージで骨盤底筋にふんわり力を入れます。
吐き切ったら力を抜き、また鼻から吸います。
1セット10回、1日2〜3セットを目安にします。「強く締める」よりも「ふんわり引き上げる」感覚で行います。
尿漏れが改善しない・痛みがある場合は専門家にご相談ください。
② バードドッグ(体幹安定エクササイズ)
骨盤を安定させながら深層筋を穏やかに鍛える運動です。BMC Pregnancy and Childbirth誌の研究(Tseng et al., 2015)でも、安定化運動が産後の腰骨盤痛の軽減に効果を示した例が報告されています。
四つん這いになります。手首は肩の真下、膝は股関節の真下に置き、背中をフラットに保ちます。
息を吐きながら、右腕と左脚をゆっくり床と平行になるように伸ばします。
骨盤が左右に傾かないよう注意します。骨盤を水平に保つことがポイントです。
3秒キープしてからゆっくり元に戻します。
左右交互に各8〜10回を目安に、痛みのない範囲で行います。
腰が痛い・骨盤がぐらつく場合は回数を減らすか中止してください。
③ 授乳・抱っこの姿勢の工夫
授乳のたびに前かがみで首を垂れる姿勢は、首・肩・腰に連続した負担をかけます。授乳クッションや抱き枕で赤ちゃんの高さを調整し、なるべく背筋を伸ばした状態を保つだけで腰への負担が変わります。抱っこは前抱きより縦抱き・横抱きを使い分け、抱っこ紐を適切に装着することも有効と考えられています。
④ 就寝時の姿勢の工夫
横向きに寝るとき、膝の間にクッションや折りたたんだタオルを挟むと骨盤の傾きが和らぎ、仙腸関節への負担が減ることがあります。マットレスが柔らかすぎる・硬すぎると感じる場合は、バスタオルで厚さを調整することから試してみてください。
開始位置(四つん這い)
伸展位置(右腕・左脚を伸ばす)
背中をフラットに保つ
右腕
左脚
金色の部分を伸ばす。骨盤は水平に保つ
図6. バードドッグの手順。四つん這いから対角線の腕と脚を同時に伸ばし、3秒キープ。骨盤が傾かないことを意識する。
当院の考え方
藤井翔悟治療院 丹波篠山院では、産後の腰痛・骨盤帯痛の方に対して、まず「どこが痛んでいるのか」と「原因はどこにあるのか」を分けて考えることから始めます。
腰が痛いといっても、その原因が腰椎にあるのか、仙腸関節にあるのか、骨盤底筋の機能低下にあるのか、育児姿勢のクセにあるのかによって、アプローチはまったく異なります。当院では、動きの確認・姿勢評価・触診を通じて、痛みの原因と考えられる場所を特定するよう努めています。
施術では、骨盤まわりの深層筋(腸腰筋・梨状筋・骨盤底筋群)への筋膜アプローチと、仙腸関節の動きを整えることに重点を置いています。産後の靭帯が弛緩している時期は、施術の力加減を通常より弱くし、体が受け入れやすい圧で行うよう心がけています。施術の効果には個人差があり、1回で完結するものではありません。
「施術を受けること」より「この先どう体を使っていくか」を一緒に考えることを大切にしています。丹波篠山で腰痛にお悩みの方 は、産後の方のご相談も受け付けています。詳しい場所はご予約時にご案内します。ご予約・お問い合わせは 075-748-1410(受付:株式会社藤井翔悟事務所)まで。営業時間は10:00〜17:00、完全予約制です。初回2,980円、2回目以降10,000円。
よくある質問
Q. 産後いつから施術を受けられますか?
産後すぐの時期は、まずお体の回復を優先してください。産婦人科の1か月健診で特に問題がないと確認できたあとを目安にご相談いただいています。強い痛みや気になる症状があれば、まず産婦人科や整形外科に相談することをおすすめします。
Q. 帝王切開でも骨盤帯痛は起きますか?
はい、起きることがあります。リラキシンによる靭帯弛緩は経腟分娩に限らず妊娠中から起きているため、帝王切開後でも骨盤帯の弛緩は続きます。また、帝王切開の傷跡(瘢痕)周辺の組織が固まることで、腰や骨盤まわりの動きに影響が出る場合もあります。術後の状態は産婦人科の先生に確認した上でご相談ください。
Q. 骨盤ベルトはいつまで使えばよいですか?
靭帯の弛緩が落ち着いてくる産後3〜6か月ごろを目安に、徐々に体幹の筋肉で自分の骨盤を支えられるよう移行していくことが多いです。ただし、外したときに痛みが強い場合は、自己判断で急にやめず、専門家に相談しながら段階的に減らしていくことをおすすめします。
Q. 授乳中でも施術は受けられますか?
授乳中の方の施術も基本的に対応しています。施術台に横になることが難しい場合や、ご心配な点は初回時にお申し出ください。授乳のタイミングに合わせた予約時間の調整もご相談いただけます。
まとめ
産後の腰痛と骨盤帯痛は、妊娠中から続くリラキシンによる靭帯弛緩・骨盤底筋の機能低下・育児動作の繰り返しが重なって起きることが多いです。研究では産後3か月以内に多くの方が改善しますが、一定割合の方は長引く経過をたどります。
急激な腹筋運動や強い骨盤矯正は逆効果になりやすいため、産後早期はまず骨盤底筋のブリージングエクササイズやバードドッグなどを痛みの範囲で行い、授乳・抱っこの姿勢を見直すことが基本と考えられています。
当院では、痛む場所だけでなく原因の場所を確認するアプローチで、産後の腰痛でお悩みの丹波篠山の方 のご相談をお受けしています。施術の効果には個人差があります。ご予約は 075-748-1410 まで。
Wu WH, Meijer OG, Uegaki K, et al. Pregnancy-related pelvic girdle pain (PPP), I: Terminology, clinical presentation, and prevalence. European Spine Journal . 2004; 13(7): 575–589. PMC3476662.
Tseng PC, Puthussery S, Pappas Y, Gau ML. A systematic review of randomised controlled trials on the effectiveness of exercise programs on Lumbo Pelvic Pain among postnatal women. BMC Pregnancy and Childbirth . 2015; 15:316. PMID 26612732.
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療など医療行為に代わるものではありません。施術の効果には個人差があります。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。