腰痛

何年も続く腰痛はなぜ長引くのか|慢性腰痛を正直に整理する

編集:株式会社藤井翔悟事務所|公開 2026.08.13編集方針

「また腰が…」を何年も繰り返していませんか

丹波篠山やその周辺にお住まいの方から、「病院でレントゲンやMRIを撮っても大きな異常は見当たらないと言われた。湿布を貼ると少し楽になるが翌日にはもとに戻る。整体にも通ったが、また戻ってしまう。気がつけばもう3年以上この状態が続いている」というご相談を受けることがあります。

完全に動けないほどではないけれど、痛みがゼロになることもない——農作業や車での移動が多い丹波篠山の暮らしの中で、そのまま漫然と付き合い続けているうちに、年単位が過ぎていく。そういう腰痛の経過を辿っている方は少なくありません。

慢性腰痛は、急性のぎっくり腰とはまったく別のメカニズムで維持されています。「痛む場所が悪い」とは限らず、「なぜ痛みが続くのか」という問いの立て方自体を変える必要があります。この記事では、慢性腰痛が長引く仕組みを、研究で明らかになっていることとそうでないことを正直に分けながら整理します。

この記事でわかること(先に結論)

長くなる前に、結論を先にお伝えします。

  • 慢性腰痛の多くは「構造上の異常だけ」では説明しきれない——神経系が痛みに過剰反応する状態(中枢感作)が関与していることが研究で示されています
  • 「痛む場所」に原因があるとは限らない——腰が痛くても、臀部・股関節・骨盤底の筋膜や筋肉の硬さが腰への余分な負担をつくっていることがあります
  • 長期の安静は逆効果になりやすい——痛みがある時期でも、安全な範囲で体を動かし続けることが回復への道です
  • 「もう治らない」ではなく「仕組みを知らずに続けている」ケースが多い——仕組みを知ることが向き合い方の第一歩になります

ただし、慢性腰痛の中には早急に医療機関を受診すべきサインが紛れていることもあります。それも後ほど整理します。

慢性腰痛の正体——「骨や椎間板の問題」だけではない

急性痛と慢性痛は、まったく別の話

痛みには大きく分けて急性痛と慢性痛があります。急性痛とは、けがや炎症など「ここが傷ついている」と脳に知らせるアラートです。ぎっくり腰の直後や転倒後の腰の痛みがこれにあたります。組織の損傷が回復するにつれて、痛みも自然に治まっていくのが通常の流れです。

慢性痛は、これとは根本的に異なります。医学的には「3か月以上続く痛み」を慢性疼痛と定義することが多く、腰痛は世界的に見ても最も多くの障害関連負担を引き起こしている疾患の一つとされています(Hartvigsen et al., 2018)。慢性腰痛においては、組織の損傷が修復された後も痛みの信号が出続けることがあります。これは「骨が悪い」「椎間板が潰れている」だけでは説明がつかない現象です。

急性痛(正常な治癒の経過) 痛み 時間 急性期 回復へ 慢性痛(長引くパターン) 痛み 時間 慢性化 本来の回復線
急性痛は組織の回復とともに治まるが、慢性痛では本来の回復線(点線)を超えて痛みが持続する

中枢感作——神経が「敏感になりすぎた」状態

慢性腰痛に関わる重要な概念が「中枢感作(ちゅうすうかんさ)」です。脊髄や脳といった中枢神経系が過剰に反応しやすくなった状態のことで、本来なら痛みを感じないような弱い刺激(軽く触れるだけ、少し動かすだけ)でも、強い痛みとして認識されるようになります。

2021年に発表された系統的レビューでは、慢性腰痛患者において神経系の過敏化が一定の割合で見られることが報告されています(Schuttert et al., 2021)。ただし、中枢感作を直接確認する方法はまだ確立されておらず、「この人の慢性腰痛は中枢感作が原因だ」と断定することは現時点では困難です。仕組みの一つとして理解しておくことが重要です。

中枢感作のしくみ(模式図) 正常な 状態 末梢組織 脊髄後角 脳(認識) 弱い信号 「少し痛い」 中枢感作 の状態 末梢組織 脊髄後角 (過敏化) 脳(認識) 弱い信号 「強い痛み」 として認識 中枢感作では、弱い刺激が脊髄・脳で増幅され、強い痛みとして認識される
中枢感作(模式図):脊髄後角が過敏化すると、同じ弱い信号でも「強い痛み」として認識されるようになる

画像検査と痛みがズレる理由

「レントゲンやMRIで椎間板が潰れているのにまったく症状がない人」も、「画像では異常がないのに毎日強い痛みがある人」も、実際に存在します。これは、画像で見える構造の変化(椎間板の変性・骨棘など)が、必ずしも痛みの原因と一致しないことを示しています。痛みは組織の状態だけで決まるものではなく、神経系がどのように信号を処理するか、生活習慣・睡眠・ストレスなども複合的に影響します。

「気のせい」ということではありません。痛みは常に本物です。ただ、「どこかが壊れているから痛い」というシンプルな構図だけでは説明しきれない、もう少し複雑な仕組みがある——というのが現在の研究が示していることです。

なぜ長引くのか——「痛む場所」と「原因の場所」の違い

痛む場所に原因があるとは限らない

腰が痛いとき、私たちは自然に「腰が悪いのだ」と考えます。しかし臨床でよく見られるのは、腰に痛みがあるにもかかわらず、腰自体の状態はそれほど問題ではなく、むしろ臀部(お尻の筋肉)・股関節・骨盤底の硬さや筋膜の緊張が腰への負担をつくっているケースです。

丹波篠山の農作業(中腰での草取り・黒豆の収穫・稲刈りなど)や長距離の車移動によって股関節が慢性的に詰まった状態になると、腰の椎間関節に余分な負荷がかかり続けます。「腰が痛い」と感じていても、腰だけを揉んだり温めたりしているだけでは根本的な状況は変わりません。

「痛む場所」と「原因の場所」のズレ(後面からのイメージ) 腰椎 痛む場所 (腰椎周辺) 原因の場所 (臀部・股関節) ✕ 痛む場所(腰)  ◎ 原因に関与しやすい場所(臀部・股関節の筋膜)
腰に痛みを感じていても、臀部・股関節の筋膜・筋肉の硬さが腰への負担をつくっているケースがある(イメージ図)

慢性化を加速させる「動かなくなる悪循環」

痛みがあると、人は自然に「動くと悪化するかもしれない」と感じ、動きを制限するようになります。これ自体は急性期には適切な反応です。問題は、慢性期になっても同じ回避行動が続いてしまうことです。

動かないでいると、筋肉や筋膜は徐々に硬くなります。血流が低下し、局所に酸素や栄養が届きにくくなります。それが痛みの閾値(いきち)をさらに下げ、より小さな動きでも痛みを感じやすくなる——この悪循環が慢性腰痛を維持させる大きな要因の一つです。

慢性腰痛を維持する悪循環 痛み・不安 動きを避ける (回避行動) 筋肉・筋膜の 硬直・血流低下 痛みの閾値が下がる (より敏感に)
痛み→回避行動→筋膜硬直→感作→さらなる痛みという悪循環が慢性腰痛を維持させる

「完全に治ってから動こう」は成り立たない

急性期と違い、慢性期には「完全に痛みがなくなるまで待ってから動く」という戦略は機能しないことが多いです。痛みを感じながらでも、安全な範囲で動き続けることが、神経系の過敏化を落ち着かせ、筋肉・筋膜の柔軟性を取り戻す助けになります。「少し動くと痛みがある→だから動かない→さらに硬くなる」の連鎖を、どこかで意識的に断ち切る必要があります。

やってはいけないこと

長期の安静・寝たきり

ぎっくり腰の直後であれば2〜3日の安静は合理的ですが、慢性腰痛においては長期の安静は回復を遅らせる可能性があります。当院の経験でも、「痛いから1か月ほとんど横になっていた」という方が、腰と臀部の筋肉が萎縮してかえって動きにくくなっているケースを見てきました。もちろん、急激な運動開始も避けるべきですが、「じっとしているのが安全」という考え方は慢性期においては見直す必要があります。

痛む場所だけを繰り返し揉む・温める

腰の表面だけを繰り返しほぐすことで一時的に楽になっても、原因が別の場所にある場合は翌日には元に戻ります。「また戻った」という感覚が繰り返されることで、「もう治らない」という諦めが定着してしまうことがあります。痛む場所ではなく、体全体の動きのパターンを見直すことが大切です。

「もう年だから仕方ない」と諦める

年齢による変化が痛みに影響することは事実ですが、「年だから治らない」という決めつけは必ずしも正確ではありません。何歳であっても、適切なアプローチによって痛みが楽になる例はあります。ただし効果には個人差があります。

強い痛み止めの長期依存

痛み止めは短期的な症状緩和に有効です。しかし慢性腰痛において薬だけで長期間対処し続けることは、根本的な原因へのアプローチにはなりません。薬の使い方については必ず担当の医師・薬剤師にご相談ください。

受診をおすすめするサイン(レッドフラッグ)

以下のサインがある場合、慢性腰痛とは別の、より深刻な疾患が隠れている可能性があります。速やかに整形外科・内科・泌尿器科など医療機関を受診してください。

  • 両脚・股間のしびれや脱力が突然起きた(脊髄圧迫のサインの可能性)
  • 排尿・排便のコントロールができなくなった(馬尾症候群の可能性)
  • 安静にしていても腰痛がひどい、夜間・就寝中に増悪する
  • 発熱・原因不明の体重減少を伴う腰痛(感染・悪性腫瘍の可能性)
  • 転倒・事故など外傷後の急激な腰痛
  • 骨粗しょう症のある方の急激な腰痛(圧迫骨折の可能性)
  • 排尿時の痛み・血尿を伴う腰痛(泌尿器疾患の可能性)

これらのサインがない場合でも、「何かいつもと違う」と感じたら医療機関に相談することをおすすめします。本記事は診断・治療の代わりになるものではありません。

自分でできること——慢性腰痛を楽にする日常の工夫

以下の方法は、慢性腰痛に対して安全に取り組める例です。痛みが増悪する場合は中止してください。効果には個人差があります。

1. 股関節をゆっくり回す動作(1日2回・各10回)

仰向けに寝て片膝を両手で抱えます。そのまま膝を胸に引き寄せ5秒キープしてゆっくり戻します。左右各10回。目的は股関節の可動域を確保し、腰への負担を減らすことです。「少し張りを感じる程度」で止めてください。無理に引き寄せる必要はありません。膝に疾患がある方、股関節疾患がある方は医師に相談してから行ってください。

2. 臀部のストレッチ(1日2回・各30秒×2セット)

椅子に座った状態で右足首を左膝の上に乗せます(いわゆる「4の字」の姿勢)。背筋を伸ばしたまま上体を軽く前傾させると、お尻の外側(梨状筋のあたり)に張りを感じます。30秒キープして戻し、左右2セットずつ。臀部の硬さが腰痛に関与している場合、このストレッチが腰の負担軽減に役立つことがあります。急に強い痛みが出る場合はすぐに中止してください。

3. 「少しだけ歩く」習慣(1日10〜15分から)

慢性腰痛の方が恐れやすいのが「歩くこと」ですが、適度なウォーキングが慢性腰痛に有益とされるケースは多く報告されています。最初は「腰が少し重いな」と感じる程度で10〜15分が目安。歩いた後30分以上痛みが増すようであれば、距離や時間を減らして調整してください。

4. 寝姿勢の見直し(横向き寝のひと工夫)

横向きで寝ることが多い方は、両膝の間にクッションや丸めたタオルを挟むことで、腰への回転ストレスが軽減される場合があります。睡眠不足は痛みの感受性を高めることも知られていますので、睡眠の質自体を意識することも慢性腰痛の管理に役立ちます。

「4の字」ストレッチ(正しい姿勢) 体幹 ここが伸びる 背筋を伸ばし、ゆっくり前傾 注意:やりすぎに気をつける ・急に強く引き寄せない ・「痛気持ちいい」程度にとどめる ・膝・股関節に疾患がある方は  医師に相談してから行う ・強い痛みが出たらすぐ中止 効果には個人差があります
臀部ストレッチ(4の字)の正しい姿勢と注意点。お尻の外側の筋肉を安全にゆるめる

当院の考え方——「原因の場所」を探すところから

藤井翔悟治療院 丹波篠山院では、腰痛に対してまず「痛む場所」と「原因の場所」を分けて考えるところから評価を始めます。技術責任者の藤井翔悟(理学療法士)は著書『痛みが消える魔法の腰痛学』(PHP研究所)でも「腰痛の多くは腰だけの問題ではない」という立場を取っています(詳細は会社公式サイトで公表の実績をご参照ください)。

当院での評価の流れは次の通りです。まず問診でどんな動作・時間帯・状況で痛みが出るかを丁寧に確認します。次に立位・座位・歩行などの動作観察を行い、「どこかに重心が偏っていないか」「動きの中でどこが詰まっているか」を確認します。最後に触診で筋膜・関節の状態を確認し、原因と考えられる場所に対してアプローチを行います。

当院の評価・施術の流れ 問診 症状・生活習慣 動作観察 重心・動きの詰まり 触診 筋膜・関節の状態 原因の場所を 特定 施術・ ホームケア指導 「痛む場所」ではなく「原因の場所」へのアプローチを基本とする
当院の評価から施術までの流れ。問診・動作観察・触診を通じて「原因の場所」を特定することを重視する

慢性腰痛の場合、1回の施術で大きく変わることは稀で、継続的なアプローチが必要になることがほとんどです。施術の効果を保証することはできませんが、「原因の場所を見つけること」に最大限の時間を割くことをお約束します。効果には個人差があります。

当院は完全予約制です。お電話(075-748-1410)にてお問い合わせください。受付時間は10:00〜17:00です。初回料金は2,980円、2回目以降は10,000円となります。詳しい場所はご予約時にご案内いたします。またご予約ページ料金・施術の流れもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q1. 何年も腰痛が続いています。今さら良くなりますか?

「今さら」という言葉が出るほど長く続いている腰痛は、それだけ悪循環が定着している可能性があります。ただし、期間の長さだけで「改善しない」と断言することはできません。適切なアプローチで痛みの感じ方や日常の動きやすさが変わる例はあります。ただし効果には個人差があり、改善を保証することはできません。まずは「仕組みを知ること」から始めることをおすすめします。

Q2. 湿布や痛み止めは使っていいですか?

短期間の症状緩和として湿布や痛み止めを使うことは一概に否定できません。ただし慢性腰痛において薬だけで長期間対処し続けることは根本的な解決にはなりません。薬の使い方については必ず処方した医師・薬剤師にご相談ください。

Q3. 農作業を続けながら腰痛を改善することはできますか?

農作業(中腰作業・草刈り・稲作・黒豆の収穫など)は腰への負担が大きく、完全に休むことが難しいのも現実です。当院では「農作業を続けながら、どう負担を分散するか」という実用的な視点でもアドバイスを行っています。ただし、農作業の種類・量・その方の状態によってアドバイス内容は異なります。

Q4. ヘルニアや狭窄症と診断されていますが施術を受けられますか?

椎間板ヘルニア脊柱管狭窄症などの診断がある方も、医師から施術を止められていない場合は対応可能です(ただし症状の程度・手術後の状態によります)。ご予約の際に診断名と現在の状態をお知らせください。判断が難しい場合はお断りすることもあります。

Q5. 自分でできることをしながら、当院に通う意味はありますか?

自分でできるセルフケアと専門家によるアプローチは、それぞれ役割が違います。セルフケアは「日常の中で負担を減らし、維持する」ためのもので、当院では「どこに問題があるかを特定し、原因の場所に直接働きかける」アプローチを行います。両方を組み合わせることで、相乗効果が期待できる場合があります。効果には個人差があります。

まとめ

慢性腰痛が長引く理由は「構造の異常だけ」では説明しきれないことが多く、神経系の過敏化・痛む場所と原因の場所のズレ・動かないことによる悪循環が複合的に関与しています。「治らない」とあきらめる前に、まず「なぜ痛みが続くのか」という仕組みを知ることが、向き合い方の第一歩になります。

丹波篠山で慢性腰痛にお悩みの方は、当院の腰痛ページもあわせてご覧ください。ご不明な点はお電話(075-748-1410)にてお気軽にお問い合わせください。

  1. Hartvigsen J, Hancock MJ, Kongsted A, et al. What low back pain is and why we need to pay attention. Lancet. 2018;391(10137):2356-2367. DOI: 10.1016/S0140-6736(18)30480-X
  2. Schuttert I, Timmerman H, Petersen KK, et al. The Definition, Assessment, and Prevalence of (Human Assumed) Central Sensitisation in Patients with Chronic Low Back Pain: A Systematic Review. J Clin Med. 2021;10(24):5931. DOI: 10.3390/jcm10245931

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療など医療行為に代わるものではありません。施術の効果には個人差があります。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。

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