膝の痛み

膝が痛いシニアの方の運動|やってよいこと・避けたいこと

編集:株式会社藤井翔悟事務所|公開 2026.09.11編集方針

丹波篠山で「膝が痛くて歩くのが怖い」と感じているシニアの方へ

「膝が痛いので、運動はしないほうがいいですか?」当院を訪れるシニアの患者さんから、もっともよく聞かれる質問のひとつです。痛みがあると「動くと悪化するのでは」と感じるのは自然なことです。丹波篠山のような農村地域では、毎日の農作業や買い物のために車での移動が欠かせません。膝の痛みでその行動範囲が狭まっていくと、体だけでなく気力も落ちていく方を多く見てきました。

「もう年だから仕方ない」「運動したら余計に悪化する」と感じている方も多いのですが、現在の研究では少し違う見方が広まっています。この記事では、膝が痛いシニアの方が「やってよいこと」と「避けたほうがよいこと」を、現時点の研究と当院の臨床経験をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 膝が痛くても「適切な運動」が推奨される理由
  • シニアの方の膝にとって本当に避けるべき動作とその理由
  • 今日から自宅でできる安全な運動(手順・回数つき)
  • すぐに整形外科を受診すべき症状のサイン

この記事は、変形性膝関節症または加齢による膝の痛みを抱えるシニアの方を想定しています。膝の腫れ・熱感・外傷直後の痛みがある方は、まず医療機関へのご相談をおすすめします。

膝の痛みの正体|軟骨と筋肉の両方が関わっている

シニアの方の膝痛でもっとも多い原因のひとつが、変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)です。変形性膝関節症は、関節の表面を覆う軟骨(なんこつ)が少しずつすり減り、骨どうしが近くなることで痛みや動きづらさが生じる状態です。

膝関節は、大腿骨(だいたいこつ・太ももの骨)と脛骨(けいこつ・すねの骨)が重なる部分に、クッションの役割を果たす軟骨と半月板(はんげつばん)が挟まっています。この軟骨は血管がないため、栄養は関節液の循環によって届けられています。膝を動かすことで関節液が循環し、軟骨は栄養を受け取ります。

膝関節の断面模式図 正常な膝 変形性膝関節症 大腿骨 軟骨 (厚い) 脛骨 軟骨が薄く なる 骨棘が できやすい 骨どうしが 近くなる
図1|膝関節の断面模式図。正常(左)では軟骨が厚く骨にゆとりがあるが、変形性膝関節症(右)では軟骨が薄くなり骨棘が生じやすい。

変形性膝関節症が進行すると、骨の縁に骨棘(こっきょく)と呼ばれる突起ができたり、関節液が過剰に分泌されて腫れが生じたりすることもあります。日本整形外科学会の『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』によれば、70歳以上では多くの方に変形性膝関節症の所見がみられると報告されています。

ただし、レントゲンで「軟骨がすり減っている」と指摘されても、必ずしも強い痛みがあるわけではありません。逆に、画像ではさほど変化がなくても痛みを強く感じる方もいます。痛みは「軟骨の損傷の程度」だけでなく、膝周囲の筋肉・筋膜の緊張、神経の感度、日々の動き方の習慣など複数の要素によって決まります。

特に大腿四頭筋(だいたいしとうきん・太ももの前面の筋肉)の衰えは、膝への負担増加に直結します。この筋肉は膝の動きを制御する主役で、加齢とともに落ちやすい部位です。大腿四頭筋が弱くなると、歩くたびに膝関節に過剰な力がかかり、痛みや変形の進行につながりやすくなると考えられています。

なぜ膝の痛みは長引くのか|「動かさない」が悪循環をつくる

「膝が痛いと感じたら、まず安静に」という考えは、ケガの直後には有効ですが、慢性的な膝痛には当てはまらないことが多いとわかってきました。長期間、膝をかばって動かさないでいると次のようなことが起こります。

慢性的な膝痛の悪循環 膝の痛み 慢性的に続く 安静にしすぎ 動かさない 筋力低下 大腿四頭筋が衰える 膝への負担増加 関節への圧力が増す ここから 始まる この循環が 慢性化を招く
図2|慢性的な膝痛の悪循環。痛みをかばって動かさないでいると筋力が低下し、かえって膝への負担が増えて痛みが続きやすくなる。

筋力の低下

大腿四頭筋をはじめとする膝周囲の筋肉は、使わないと急速に衰えます。筋力が落ちると歩くたびに膝関節に直接かかる力が増し、軟骨への負担が大きくなります。「痛いから動かない→筋力が落ちる→膝にかかる負担が増える→さらに痛くなる」という悪循環が生じやすくなります。

関節液の循環の停滞

軟骨の栄養は関節液の循環によって運ばれます。動かさないと関節液の循環が滞り、軟骨の状態が悪化する可能性があります。適度に膝を動かすことが、関節の内側の環境を整えるためにも必要とされています。

痛みに敏感になる神経の変化

慢性的に動かさない状態が続くと、痛みを感じる神経が過敏になっていくことがあります。「以前は何でもなかった動きが急に痛い」「少し動いただけで強く痛む」という状態は、膝の構造の問題だけでなく、神経の過敏化が関わっている場合があります。

体全体への影響

膝をかばって歩かなくなると、体全体の筋力・バランス能力が落ちます。丹波篠山では畦道や坂道を歩く機会も多く、足腰全体の機能が落ちると転倒リスクが高まります。「膝だけの問題」と思っていたことが、全身の健康に波及していくことがあります。

「痛む場所(膝)」に注目するのは自然なことですが、「痛みを長引かせている原因」は膝そのものよりも、膝周囲の筋肉や動き方の習慣にあることが少なくありません。

やってはいけないこと|かえって膝を傷める可能性がある動作

避けたい動作 vs 代替の工夫 避けたい動作 代替の工夫 重い荷物を持って歩く 台車・カートを使う 急な立ち上がり・向き変え 5秒かけてゆっくり動く 正座・深いしゃがみ込み 低い椅子を活用する 痛みを我慢して続ける 痛みは5点以内を目安に 準備運動なしで始める 5分の室内歩行から慣らす 膝への 過負荷に なりやすい 無理なく 継続できる 方法を選ぶ
図3|膝の痛みがあるときに避けたい動作と、日常で取り入れやすい代替の工夫。

重い荷物を持っての長距離歩行

荷物を持って歩くと、膝への負荷は体重以上になります。農作業や買い物で重いものを運ぶ習慣がある方は、台車・リュック・カートを利用するなど持ち方を工夫すると膝への負担を減らせます。

急な動き・方向転換

「急いで立ち上がる」「すぐに向きを変える」などの動きは、膝への瞬間的な負荷を大きくします。できるだけゆっくりと立ち上がる、方向転換するときは足ごと回すなどの工夫が助けになります。

正座・深いしゃがみ込み

正座や深いしゃがみ込みは膝の屈曲角度が最大になり、軟骨への圧力が高まりやすい姿勢です。農作業での草むしりや畑仕事で自然と行いがちな動作ですが、低い椅子を活用するなど代替の方法を探すと負担を減らせます。

「痛みを我慢して続ける」運動

「多少痛くても続ければ慣れる」という考えは、膝痛には当てはまらないことが多いです。運動中に「ズキッ」という鋭い痛みや、翌日に腫れ・熱感が生じる場合はその運動の強度・内容が合っていないサインです。痛みの範囲内でできる運動から始めることが大切です。

ウォーミングアップなしの運動

冷えた状態の筋肉・関節は動きが固くなっています。運動を始める前に5分程度、室内をゆっくり歩いたり軽いストレッチをしたりして体を温めてから行うと、痛みが起きにくくなります。丹波篠山は盆地で朝晩の冷え込みが強い地域です。特に冬場は体が温まるまでに時間がかかるため、準備運動を丁寧に行うことをおすすめします。

すぐに受診をおすすめするサイン(レッドフラッグ)

以下のいずれかが当てはまる場合は、自己判断での運動を中断し、整形外科など医療機関をご受診ください。

  • 膝が熱をもち、大きく腫れている(感染・偽痛風・関節炎の可能性)
  • 安静にしていても強い痛みが続く
  • 転倒や強くぶつけた後から急に痛くなった(骨折・靱帯損傷の可能性)
  • 膝が「抜ける」感じや、ロックして伸ばせない(半月板損傷の可能性)
  • 発熱・倦怠感を伴う膝の痛み(関節リウマチなど全身疾患の可能性)
  • 体重減少・夜間の強い痛みが同時にある(腫瘍など重篤疾患の除外が必要)

これらは「慢性的な膝の痛み」とは区別すべきサインです。迷ったときは受診を優先してください。

自分でできること|安全な運動の始め方

2024年に発表されたコクランレビュー(Lawford BJ et al., Cochrane Database of Systematic Reviews, 2024, PMID: 39625083)は、139件の試験・12,468人を対象に分析を行い、「運動は短期的に膝骨関節炎の痛み・身体機能・生活の質を改善させる可能性がある」と報告しています。このレビューは膝の運動療法に関する最大規模の系統的評価のひとつです。

また、日本整形外科学会が監修した『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』においても、運動療法は非薬物療法の中核として推奨されています。研究が示す推奨される運動のポイントは以下のとおりです。

  • 低〜中強度の有酸素運動(ウォーキング・水中歩行など)
  • 大腿四頭筋を中心とした筋力強化運動
  • バランス・柔軟性を高めるエクササイズ

運動1 大腿四頭筋セット(座ってできる基本)

椅子に浅く腰かけ、片足をゆっくり前に伸ばします。太ももの前面の筋肉(大腿四頭筋)が軽く締まる感覚を確認しながら、5秒間保ちます。そのままゆっくり下ろして5秒休む。これを1セット10〜15回行い、左右両方に実施します。膝を伸ばすときに急に動かさず、なめらかに伸ばすことがポイントです。痛みが強い場合は、完全に伸ばしきらなくても構いません。

大腿四頭筋セット(椅子に座って) 5秒保つ 5秒休む 10〜15回 大腿四頭筋 (ここに力) ゆっくり 伸ばす
図4|大腿四頭筋セット。椅子に座って片足をゆっくり伸ばし5秒保つ。太ももの前面が締まる感覚を確認しながら行う。

運動2 椅子を使った立ち上がり練習

椅子に座った状態から、手を使わずにゆっくり立ち上がります。5秒かけて立つ・3秒立つ・5秒かけて座るというリズムで行います。急いで立ち上がると膝に瞬間的な大きな力がかかるため、「ゆっくり」がポイントです。1セット5〜10回を目安に、翌日の様子を見ながら増やしていきます。転倒防止のために、壁や手すりの近くで行うことをおすすめします。

運動3 ウォーキング(平地で15〜30分)

舗装された平地での歩行は、膝周囲の筋肉を総合的に使い、関節液の循環も促します。最初は10分程度から始め、翌日に腫れや痛みの増悪がなければ少しずつ時間を延ばします。丹波篠山は盆地のため冬場は路面凍結に注意が必要です。滑りにくい靴底・かかとが安定したシューズを選ぶことをおすすめします。

安全なウォーキングの体の使い方 視線は 2〜3m先 背筋を 軽く伸ばす かかとから 着地する 小幅で ゆっくり 痛みは 5点以内
図5|ウォーキング時の体の使い方。視線を2〜3m先に向け、かかとから着地し、小幅でゆっくり歩くことで膝への衝撃を和らげやすい。

注意事項

  • 運動後に膝の腫れや熱感が出た場合は、次の日は休む
  • 運動中の痛みは10点満点で5点以内にとどめることを目安にする
  • 週2〜3回から始め、慣れてきたら週4〜5回に増やしていく
  • 効果を実感するには4〜6週以上かかることが多い。すぐに結果が出なくても継続が大切

当院の考え方|膝の痛みを「膝だけ」で診ない

藤井翔悟治療院 丹波篠山院では、膝の痛みを相談に来られた方に対して、まず「膝がなぜ今の状態になっているのか」を丁寧に確認することから始めます。

当院が重点を置いているのは、筋膜(きんまく)という観点です。筋膜は全身の筋肉・内臓・神経を包む薄い膜の連続体で、膝周囲の筋膜の状態が膝の痛みや動きに影響していると考えられています。たとえば、お尻の筋肉(臀筋群)や股関節周囲の筋膜が緊張していると、その影響が膝にまで及んでくることがあります。当院の経験では、膝への直接的なアプローチよりも、股関節・骨盤まわりの状態を整えることで膝の動きが楽になる例があります。

施術では、膝そのものを強く押したり激しく動かしたりするのではなく、膝に影響を与えている「離れた場所の筋膜の状態」を確認しながらアプローチしていきます。施術の効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が出るわけではありません。

また、日常の動き方(歩き方・立ち方・農作業中の姿勢)が膝への負担をつくっている場合は、セルフケアの提案も合わせて行います。「何度施術しても戻る」という方の多くは、日常の動き方のパターンにアプローチできていないことが一因になっています。

当院での施術をご希望の方は、完全予約制です。詳しい場所はご予約時にご案内します。電話: 075-748-1410(受付時間 10:00〜17:00)。初回は2,980円にて全体の状態を確認させていただきます。

丹波篠山で膝の痛みにお悩みの方へ、当院の詳しい情報はこちらをご覧ください料金や施術の流れはこちら

よくある質問

Q1. 膝が痛いのに水泳や自転車はよいですか?

水泳(特に水中ウォーキング)と自転車は、膝への体重負担が少ない運動として推奨されることが多いです。水中では浮力が体重を支えるため、膝関節への衝撃が陸上より大幅に軽減されます。自転車はサドルの高さを調整して、膝の屈曲角度が深くなりすぎないようにすることが重要です。いずれも短時間から試して、翌日の反応を確認しながら進めることをおすすめします。

Q2. 軽い痛みがある状態でウォーキングを始めても大丈夫ですか?

軽い痛みであれば、無理のない範囲でのウォーキングは継続可能な場合が多いとされています。ただし、歩行中に「ズキッ」とする鋭い痛みが走る・歩くたびに膝が大きくガクガクする・歩行後に腫れが増すといった場合は、一度中断して医療機関に相談することをおすすめします。クッション性があり、かかとが安定した靴を選ぶことも効果的です。

Q3. どこから始めればよいかわかりません

最初は「大腿四頭筋セット」が取り組みやすい出発点です。椅子に座ったまま行えるため転倒のリスクがなく、関節への負担も少なく済みます。1セット(10〜15回)を痛みなく行えるようになったら、立ち上がり練習や短時間のウォーキングへ進む順番が安全です。当院ではご予約の上、個々の状態に合わせたセルフケアの提案も行っています

Q4. 膝サポーターは常につけていたほうがよいですか?

膝サポーターは、歩行時の不安感を軽減したり膝を温める効果があったりと、合っていれば補助的に役立つことがあります。ただし、常時装着することで周囲の筋肉が使われにくくなる可能性もあるため、「活動時の補助として使う」という位置づけが一般的です。整形外科や理学療法士に相談しながら選ぶことをおすすめします。

まとめ

段階的な運動プログラムの目安 開始 1〜2週 3〜4週 5〜6週 継続 準備運動 のみ 四頭筋セット 10回 立ち上がり 練習を追加 10〜20分 歩行を追加 週4〜5回 の習慣化 翌日の反応 を確認しながら 変化が出るのは 4〜6週以降
図6|段階的な運動プログラムの目安。翌日の反応を確認しながら、少しずつ内容と時間を増やしていく。

膝が痛いシニアの方にとって、「動かないこと」は必ずしも膝にやさしい選択ではありません。現在の研究は、適切な運動が膝の痛みや機能の改善に役立つ可能性を示しています。大切なのは「何でもすればよい」ではなく、自分の状態に合った強度・種類の運動を選ぶことです。

「どこから始めればよいかわからない」「一度誰かに状態を診てもらいたい」と感じている方は、ぜひ当院にご相談ください。丹波篠山でご年配の方の膝の痛みと向き合う経験を積んできた立場から、一緒に考えていきます。

  1. Lawford BJ, Hall M, Hinman RS, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2024;(12):CD004376. PMID: 39625083. doi:10.1002/14651858.CD004376.pub4
  2. 日本整形外科学会 監修. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 南江堂, 2023年.

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療など医療行為に代わるものではありません。施術の効果には個人差があります。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。

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