五十肩

農作業を続けながら五十肩と向き合う|丹波篠山の農家の方へ時期別の工夫

編集:株式会社藤井翔悟事務所|公開 2026.08.31編集方針

稲刈りの季節に肩が上がらない――丹波篠山の農家に多い悩み

「先週まで普通に動いていたのに、ある朝から肩が上がらなくなった」「夜中に肩が疼いて目が覚める」——丹波篠山院には毎年秋口になると、農作業の最中に肩の異変を感じた方から相談が届きます。稲刈り、脱穀、高い棚への荷物の載せ降ろし——肩を使う作業が集中するこの季節に、じわじわと肩の可動域が狭まっていきます。

農作業を休むわけにはいかない。でも動かすたびに痛い。そのジレンマの中で「様子を見ていたらもっと動かなくなった」という経緯でいらっしゃる方が少なくありません。五十肩は対処の仕方を誤ると、農繁期をまたいで長期化しやすい疾患です。

この記事では、農作業との関わりが深い五十肩(医学的には癒着性関節包炎)について、なぜ起きるのか・なぜ農家の方に長引きやすいのか・農作業を続けながら対処するためのヒントを、現在分かっている研究と当院の経験を交えながら整理します。「治る」と断言することはできませんが、時期を正確に見きわめて対処を選ぶことが、長い目で見た回復への近道になると当院では考えています。

この記事でわかること

先にお伝えします。五十肩には「炎症が強い時期(炎症期)」「動きが固まる時期(拘縮期)」「徐々に改善する時期(回復期)」の3段階があり、時期によって対処の仕方がまったく異なります。炎症期に「固まる前に動かさないと」と無理をすると、かえって経過を長引かせる可能性があります。

農作業を完全に止める必要はないケースがほとんどですが、時期を誤った動かし方が回復を遅らせる原因になります。また、農作業で繰り返す頭上への腕の動きが、肩の関節包という組織に繰り返し刺激を与えやすいことが分かっています。「どの動作が肩に何をしているか」を知ることが、無理なく作業を続けるための第一歩です。

五十肩の正体――肩関節の「袋」が炎症・癒着する

肩関節の断面模式図 関節窩(肩甲骨側) 関節包(袋) 炎症が起きやすい部位 腱板(ローテーターカフ) 上腕骨頭 ※模式図。実際の比率・位置とは異なります
図1:肩関節の断面模式図。点線(ゴールド)が「関節包」。五十肩はここが炎症・肥厚して動きを制限する。赤い部分が炎症の起きやすい箇所。

肩関節は、上腕骨の丸い骨頭と肩甲骨の関節窩(浅いお皿)からなります。この2つの骨を包む薄い袋状の組織を「関節包」と呼びます。五十肩(癒着性関節包炎)は、この関節包が何らかの理由で炎症を起こし、やがて線維化・収縮して袋が縮んだ状態になる疾患です。

StatPearlsの2024年版レビューによると、一般成人での有病率は2〜5%と報告されており、平均発症年齢は55歳前後、女性に1.4倍ほど多い傾向があります。なぜ関節包が炎症を起こすのか、明確な原因はまだ十分に解明されていません。糖尿病・甲状腺疾患・長期の固定(ギプスや術後安静)が既知のリスク因子として挙げられています。

農作業との関係では、上肢を繰り返し高く上げる動作(脱穀機への投入・棚の高さの作業・稲積みなど)が肩の関節包に繰り返し刺激を与えやすい姿勢であることが指摘されています。2021年にBMC Musculoskeletal Disordersに掲載されたBarthelme らの研究(ドイツの就労者調査、n=約19,000)では、頭上での作業を頻繁に行う労働者はそうでない労働者と比べて腕部の痛みリスクが18%高く(有病率比1.18、95%CI 1.04〜1.34)、農業・手工業職では頭上作業の頻度が特に高いと報告されています。同論文は「頭上作業は肩・腕の痛みのリスク因子とみなすべき」と結論づけています。

五十肩の3つの時期(一般的な経過) ① 炎症期 ② 拘縮期 ③ 回復期 2〜9ヶ月 4〜12ヶ月 6〜26ヶ月 強い痛み・夜間痛 痛みは落ち着くが硬さ残る 可動域が徐々に戻る 動かすと悪化しやすい 可動域が最も狭い 動かすと改善しやすい 全体の経過:平均1〜3年(個人差が非常に大きい) 約80%の方が適切な対処で日常生活にほぼ支障なく回復(文献1より)
図2:五十肩の3時期と目安の期間。「今どの時期か」によって、動かしてよいか・休むべきかが変わる。

なぜ農家の五十肩は長引きやすいのか

農作業中の腕の高さと肩関節包への負荷 肩より下での作業 関節包への負荷: 比較的小さい 例:草むしり・収穫物の仕分け 肩より上での作業(炎症期は要注意) ! ! 関節包への負荷: 大きくなりやすい 例:脱穀機操作・高棚への作業・稲積み
図3:農作業の上肢の高さと肩への負荷の違い。炎症期は特に、肩より上への腕の動きが症状を悪化させやすい。

五十肩はもともと「自然に治る疾患」として知られています。しかし農家の方に長引きやすい理由がいくつかあります。

① 炎症期に動かし続けてしまう

「痛くても動かさないと固まる」という情報が広まっていますが、これは炎症が落ち着いた後(拘縮期・回復期)の話です。炎症が強い時期に無理に動かすと、関節包の炎症がさらに広がる可能性があります。農作業を続けながら「痛いが我慢して動かしていた」という方が、かえって回復が遅れるケースを当院でも多く経験しています。

② 「痛む場所」と「原因の場所」が別のことがある

五十肩で痛みを感じるのは肩の表面や腕の外側であることが多いですが、実際に問題が起きているのは肩関節包や、その周囲の筋膜です。肩こりや首の緊張が肩の動きに影響している場合もあります。「肩が痛い→肩だけを揉む」という対処では改善しないことがあるのはそのためです。当院では「五十肩の方の施術」において、肩そのものだけでなく、肩甲骨周囲・頸部・胸郭の状態も合わせて確認しています。

③ 農作業特有の繰り返し刺激

稲刈り機の操作、脱穀機への投入、高さのある棚への荷物の載せ降ろし——丹波篠山の農家では、腕を肩の高さ以上に上げる場面が農繁期に集中します。前述のBarthelme ら(2021年)の研究が示すように、頭上作業の頻度が高い職業では肩・腕への負荷が蓄積しやすく、五十肩の経過中にこれを繰り返すと炎症の収まりが遅れる可能性があります。

④ 農繁期が終わるまで受診を後回しにする

丹波篠山は春の田植え・秋の稲刈り・黒豆の収穫と農繁期が続き、「農繁期が終わってから行こう」と受診を先送りにしがちです。その間に炎症が慢性化し、より長い拘縮期へ移行してしまうことがあります。痛みの程度にかかわらず、農繁期が一段落したら早めに状態を確認されることをおすすめします。

やってはいけないこと

関節包の変化:正常 vs 五十肩 正常な関節包 ゆとりある袋 → 可動域が広い 五十肩の関節包 肥厚・収縮 → 可動域が制限される
図4:正常な関節包(左)と五十肩の関節包(右)の比較。袋が収縮・肥厚することで腕の動きが制限される。

1. 炎症期に「痛みをこらえて」無理に動かす

炎症が強い時期(発症から数週間〜数ヶ月、特に夜間痛が続く間)に「固まる前に動かさないと」と無理をすると、関節包の炎症を悪化させる可能性があります。この時期の農作業では、肩を使う動作は最小限にとどめる方が回復を早める場合があります。

2. 強い力でほぐしたり叩いたりする

「肩が凝っているから強く揉む」という対処は肩こりには有効なこともありますが、関節包に炎症がある五十肩の時期には逆効果になりやすいです。炎症している組織を強く刺激すると、かえって炎症が強まることがあります。

3. 「温めればよい」と炎症期に思い込む

温めると血流が増してよい、という理屈は正しいですが、炎症がまだ強い時期に温めると炎症が広がることがあります。熱感がある・発症直後の段階はアイシングの方が適している場合があります。

4. 「年だからしかたない」と放置する

五十肩は自然に治ることも多いですが、全員が完全に回復するわけではありません。文献1によると、約10〜20%の方に残存する痛みや可動域制限が報告されています。早めに適切な対処をとることが、より良い経過につながりやすいと考えられます。

5. 反対の腕ばかりで代替して酷使する

患側をかばって反対の腕に頼りすぎると、反対側の肩や腰への負担が増えます。農作業では特に意識的に負荷を分散するか、農機具の高さや配置を工夫することが助けになります。

このような場合はすぐに医療機関へ

五十肩に似た症状でも、以下のサイン(レッドフラッグ)がある場合は、整形外科・内科への受診を最優先してください。治療院ではなく医療機関が先です。

  • 発熱・強い発赤・熱感を伴う肩の痛み——化膿性関節炎の可能性があります
  • 安静時でも変わらない強い痛みが続く——骨腫瘍・その他の疾患の除外が必要です
  • 急に肩の力が抜けて腕が上がらなくなった——腱板断裂の可能性があります
  • しびれ・脱力感が腕・手に及ぶ——頸椎疾患(頸部神経根症など)を確認する必要があります
  • 転倒・打撲など外傷のあとに起きた痛みと制限——骨折・脱臼の確認が必要です
  • 糖尿病や甲状腺疾患がある方で急激に悪化した——基礎疾患の管理も含めて診察が必要です

迷う場合は、まず整形外科でレントゲンを撮り、骨・腱板の状態を確認してから治療院に相談される流れが安心です。

農作業を続けながら自分でできること

コッドマン振り子運動(拘縮期・回復期向け) ① 準備姿勢 テーブルに健側の手 をつき前傾姿勢 患側の腕を脱力で ぶら下げる ② 揺らす 重力任せに揺らす 前後・左右・小円 各30〜50回 力を入れない! ③ ポイント・注意 ▸ 1日2〜3回を目安に ▸ 痛みが強いときは中止 ▸ 夜間痛が強い炎症期  は行わない ▸ 運動後にアイシング  (10〜15分)も可 拘縮期・回復期向けの運動。 時期が不明な場合は 専門家に確認を。
図5:コッドマン振り子運動の手順。拘縮期・回復期に適した運動。炎症が強い時期(夜間痛あり)は行わないこと。

1. 今どの時期かを見きわめる

まず「炎症期なのか・拘縮期なのか・回復期なのか」を意識することが大切です。目安として、夜中に肩が疼いて目が覚めるような強い痛みがある間は炎症期とみてください。この時期は農作業の中でも肩より上に腕を上げる動作(脱穀機への投入・棚への作業など)は最小限にとどめることをおすすめします。夜間痛が落ち着いてきて、「痛みよりも硬さが気になる」状態になったら拘縮期に移行してきたサインです。

2. 炎症期のアイシング(10〜15分)

夜間痛が続く時期は、就寝前に保冷剤をタオルで包んで肩に10〜15分あてると、炎症を一時的に鎮める助けになることがあります。凍傷に注意し、直に肌に当てないようにしてください。農作業後の夜にじんじんする感覚があるときも、アイシングが楽になる場合があります。

3. 拘縮期・回復期の振り子運動(コッドマン体操)

夜間痛が落ち着いてきたら、重力を使って腕を揺らす「振り子運動(コッドマン体操)」が有効な場合があります。テーブルや台に健側の手をつき、前傾姿勢で患側の腕をぶら下げ、肩の力を完全に抜いて前後・左右・小さな円を描くように揺らします。各方向30〜50回、1日2〜3回が目安です。ポイントは「自分で腕を振らない」こと——重力任せに揺らすことで、肩関節包が牽引されて可動域が徐々に広がります。農作業の休憩時間に取り入れやすい運動です。

4. 農作業の合間に「肩を下ろす休憩」を取る

長時間続けて腕を肩より上に保つ作業(脱穀機の操作・高い場所での作業)をする場合は、15〜20分に一度、腕を下ろして肩を休める時間を意識的に作ることをおすすめします。疲労した筋膜が硬直する前に緩める習慣が、長い目で見た回復を助けます。また、農機具の高さ調整や作業台の配置を変えて「腕を上げなくて済む環境」にすることも有効です。

5. 睡眠姿勢の工夫

五十肩の夜間痛が強い方は、患側(痛む側)を下にして寝ると関節包が圧迫されやすいです。仰向けで患側の腕の下に薄いクッション・バスタオルを丸めたものを入れ、肩が自然な位置に保てる姿勢をとると夜間痛が和らぐ場合があります。夜よく眠れることが昼間の農作業のパフォーマンスにも直結するため、睡眠姿勢の工夫は軽視できません。

当院の考え方と施術の流れ

藤井翔悟治療院 丹波篠山院では、五十肩の方が来院された際、まず「今どの時期にあるのか」を動作確認と問診で評価することを大切にしています。炎症期・拘縮期・回復期では、アプローチの方向がまったく異なるためです。

当院では、筋膜の状態を手で確認することで、「痛む肩」だけでなく「なぜその肩に問題が起きやすい状態になっているか」を全身的な視点で整理します。農作業での繰り返し動作により肩甲骨周囲の筋膜が硬直している場合、肩甲骨の動きを回復させることが肩関節への負荷を分散する近道になることがあります。また、頸部・胸郭の状態が肩の可動域に影響していることもあり、当院では肩だけを単独でみるのではなく、連動する部位全体の状態を確認した上で施術の方針をお伝えしています。

施術の効果には個人差があります。当院の経験では、時期を正確に見きわめて対処を変えることで、農作業を完全に休まずに経過が改善する例がある一方、炎症が非常に強い場合や基礎疾患がある場合は整形外科との連携をおすすめするケースもあります。「治る・治らない」を保証することはできませんが、今の状態を正確に把握することが次の一手を選ぶためにいちばん大切だと考えています。

料金は初回2,980円、2回目以降10,000円(完全予約制)。詳しい場所はご予約時にご案内しています。電話: 075-748-1410(受付10:00〜17:00)

よくある質問

時期別:やってよいこと・避けること 時期 やってよいこと 避けること 炎症期 (夜間痛が強い) アイシング・安静 低い位置での農作業 無理な可動域訓練・強い揉み 肩より上への頻繁な作業 拘縮期 (硬さが主体) 振り子運動・温め 痛みの出ない範囲での動かし方 強い痛みをこらえての挙上 様子見だけで放置 回復期 (可動域が戻る) 積極的な可動域訓練・温め 農作業の段階的な再開 急に全力での農作業に戻る (再悪化のリスクあり)
図6:五十肩の時期別にやってよいこと・避けること。「今どの時期か」を確認してから対処を選ぶことが大切。

Q1. 農作業は完全に休まないといけませんか?

A. 必ずしも全面的に休む必要はありません。ただし時期によって「やってよい動作」が異なります。炎症期(夜間痛が強い段階)は肩より上への腕の動きを極力減らすことをおすすめします。草むしり・収穫物の仕分けなど低い位置での作業を優先し、脱穀機の操作・高棚への作業は炎症が落ち着くまで頻度を減らすか、他の方に頼むことを検討してください。拘縮期・回復期に移行してきたら、徐々に通常の作業に戻せる可能性があります。

Q2. 五十肩はどのくらいで良くなりますか?

A. 個人差がとても大きく、一般的には1〜3年かけて改善していくとされています(文献1)。ただし農作業の繰り返し刺激や、時期を誤った対処が重なると経過が長くなりやすいです。当院の経験では、早めに「今どの時期か」を見きわめて適切な対処をとった方は、そうでない方と比べて農作業への復帰が早い印象があります。ただし効果には個人差があり、経過を保証することはできません。

Q3. 整形外科と治療院はどちらへ行けばよいですか?

A. 前述のレッドフラッグ(発熱・急な脱力・しびれ・外傷後など)がある場合は整形外科を先にお受けください。画像検査(レントゲン・MRI)で骨や腱板の状態を確認することが大切です。「五十肩と言われた」「様子を見るよう言われたがどう動かせばよいか分からない」「拘縮期で可動域を回復させたい」という場合は、治療院での対応が参考になることがあります。

Q4. 反対側の肩も五十肩になることはありますか?

A. 両側同時の発症は稀ですが、片側が回復する頃にもう片方が発症するケースがあります。患側をかばって反対の腕で農作業を続けると、反対側の肩への負担が増えます。片側が回復期に入ったら、反対側の肩の状態も定期的に確認することをおすすめします。

まとめ

農作業を続けながら五十肩と向き合うためのポイントをまとめます。

  • 今どの時期かを見きわめることが最初の一歩——炎症期・拘縮期・回復期で対処がまったく異なる
  • 炎症期は肩より上への作業を減らし、アイシングで炎症を抑える
  • 拘縮期・回復期は振り子運動で可動域を取り戻す
  • レッドフラッグ(発熱・しびれ・急な脱力など)がある場合は整形外科を優先する
  • 「農繁期が終わったら行こう」という先送りが経過を長くしやすい

五十肩は適切な対処があれば、農作業を完全に止めずに経過を改善できる可能性があります。まず「今どの時期にあるか」を確認することから始めてみてください。当院では、現在の状態の評価と時期に合ったアドバイスをお伝えしています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療など医療行為に代わるものではありません。施術の効果には個人差があります。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。

  1. StatPearls: Adhesive Capsulitis. [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532955/
  2. Barthelme J, Sauter M, Mueller C, Liebers F. Association between working in awkward postures, in particular overhead work, and pain in the shoulder region in the context of the 2018 BIBB/BAuA Employment Survey. BMC Musculoskeletal Disorders. 2021;22(1):601. PMC8283940.
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