練習後に腰が痛いと言う子どもに気づいたら
「練習が終わると毎回腰が痛いと言っている」「湿布を貼って休ませているのに、一週間たっても楽にならない」——丹波篠山市内や近隣の篠山口・丹波市・三田市でも、少年野球やサッカー・剣道・バスケットボールに打ち込む子どもを持つ親御さんから、こうした相談をいただくことがあります。
大人が腰を痛めたときと同じように対処していると、成長期の腰痛では大切なことを見落としてしまうことがあります。子どものスポーツ腰痛には、大人の「筋肉の疲れ」とは異なる背景が関わっていることが少なくないからです。
この記事では、スポーツをしている成長期の子どもに多い腰痛の正体、見逃してほしくないサイン、そして親子でできる対処の考え方を整理します。丹波篠山で腰痛にお悩みの方へ のページと合わせてお読みください。
丹波篠山は農村地帯ですが、地域のスポーツクラブや中学・高校の部活で体を動かす子どもたちも多くいます。成長期のスポーツ腰痛は都市部の専門クリニックだけの問題ではなく、地域でも正しく把握しておくべきテーマだと当院は考えています。
この記事でわかること
成長期の子どもが2週間以上腰痛を訴えている場合、大人の「腰のだるさ」とは別に考える必要があります。
理由は一つ。成長期のスポーツ選手に多い腰痛は、腰椎の疲労骨折(腰椎分離症)を含んでいることが多く 、早い段階で正しい診断を受けることで、骨がきちんとくっつく可能性が高まるからです。腰椎分離症が子どもの腰痛の原因になっている割合は、成人(約5〜6%)と比べて際立って高いことが、複数の研究で報告されています。
逆に放置すると、骨折が進んで「偽関節(ぎかんせつ)」という骨がつかない状態になります。その後もスポーツを続けられることがほとんどですが、痛みが長期化したり、成人後に腰部の問題が続いたりするケースがあります。
この記事でわかる主なポイントは次のとおりです。
成長期の腰痛と大人の腰痛の構造的な違い
腰椎分離症とはどういう状態か
放置するとどうなるか・なぜ痛みが長引くのか
すぐに医療機関を受診すべきサイン(レッドフラッグ)
親子でできるセルフケアの方法
症状の正体:腰椎分離症という疲労骨折
成長期のスポーツ腰痛の中でも特に注意が必要なのが、腰椎分離症(ようついぶんりしょう) です。これは、腰椎(腰の背骨)の後ろ側にある「椎弓峡部(ついきゅうきょうぶ)」と呼ばれる細い部分が、繰り返しの負荷によって疲労骨折した状態です。
L4椎体
椎間板
L5椎体
仙骨
椎弓峡部
(分離が起きやすい場所)
椎弓峡部
後方から見た
腰椎(模式図)
図1|腰椎の後面と椎弓峡部の位置。赤い楕円が疲労骨折の起きやすい部位。
椎弓峡部は腰椎の中でもとりわけ細く、上下方向の圧縮と回旋(ねじれ)が重なると大きな負荷がかかります。特に腰を反らす動作(伸展)と体を回す動作(回旋)を繰り返すスポーツ ——野球の投球・バッティング、サッカーのキック、体操の後屈、剣道の打ち込みなど——では、この部位に繰り返しの微細なストレスがかかり続けます。
2018年に日本国内の整形外科で行われた研究によると、腰痛を主訴に受診した10代の患者507人のうち、268人(約52.9%)に腰椎分離症が確認されました(Tatsumura M, et al., 2018)。成人における腰椎分離症の有病率が一般に約6%とされていることと比較すると、いかに成長期の腰痛が分離症と深く関わっているかがわかります。
最も多く骨折が起きる部位は第5腰椎(L5)で、同研究の268人・451病変のうち297病変がL5に集中していました。男子に多い(同研究で215人/268人が男子)傾向がありますが、女子でも決して珍しくありません。
分離症の初期は「早期分離(治癒の可能性が高い段階)」、進行すると「偽関節(骨がつかない状態)」になります。早期に安静と適切な管理を行えば骨の癒合が期待できますが、進行してしまうと癒合は難しくなります。
正常な椎弓峡部
腰椎分離症
椎体
峡部(連続)
椎体
亀裂(骨折部)
峡部が連続していて
骨に問題がない状態
峡部に亀裂が入り
骨が分離している状態
図2|正常な椎弓峡部(左)と腰椎分離症(右)の対比。分離症では峡部に亀裂が入り、骨が分断された状態になる。
なぜ長引くのか:成長期の骨と痛みの特徴
成人の腰痛と子どもの腰痛が違う最大の理由は、骨の成熟度にあります 。成長期の骨は、軟骨でできた「骨端板(こつたんばん)」と呼ばれる成長軟骨を含んでいます。この部分はまだ完全に骨化しておらず、繰り返しの圧迫や引っ張りに対して成熟した骨より弱い特性があります。
成人の椎体
骨全体が
成熟・硬化している
成長期の椎体
骨の中心は
まだ成熟途中
骨端板
(成長軟骨)
骨端板
骨折しても修復が完了している
繰り返しのストレスに
弱い未成熟な骨端板がある
図3|成人の椎体(左)と成長期の椎体(右)の比較。ゴールド色の骨端板が成長軟骨で、ここが繰り返しの負荷に弱い。
分離症の痛みが「筋肉のコリ」と混同されやすいもう一つの理由は、「骨折している場所」と「痛みを感じる場所」がずれていることがある という点です。骨折そのものの痛みは腰の深部にありますが、その周囲の筋肉・筋膜が防御的に硬くなることで、腰全体の「だるさ」や「重さ」として感じられることがあります。
また、子どもは「成長痛かな」「疲れているだけかな」と感じて痛みを我慢する傾向があります。加えて「腰を痛めているとレギュラーから外れる」という心理的なプレッシャーから、親御さんに伝えずに練習を続けるケースも少なくありません。
腰椎分離症の痛みは、「腰を反らすと痛い」「練習後に腰が重くなる」「前屈(前かがみ)より後屈(反り)で痛みが出やすい」 という特徴がありますが、こうした典型的な所見がないこともあります。子どもが腰の違和感を2週間以上訴えている場合は、原因を確認することを考えてください。
放置のリスクも正直に伝えると、分離症が偽関節になった後でも多くの子どもはスポーツを継続できます。ただし、偽関節になると骨での癒合は期待しにくく、以後は痛みと付き合いながらの管理になります。早期発見・早期対応がその後の選択肢を広げます。
やってはいけないこと
子どものスポーツ腰痛への対応で、よく見かける逆効果な対処をまとめます。
① 「根性で乗り越えさせる」
骨折が進行します。早期の分離は安静にすれば癒合する可能性がありますが、痛みを無視して練習を続けると偽関節に向かいます。「足首の骨折なら休ませるが、腰は休ませない」という判断は、子どもの腰椎分離症では通じません。
② 市販の湿布や痛み止めで様子を見るだけ
湿布と鎮痛剤は一時的な痛みの緩和には役立ちます。しかし骨折の有無・進行度は画像検査なしには確認できません。痛みが弱まっても骨折が進行していることがあります。「痛みが引いた=大丈夫」ではありません。
③ 強いマッサージや揉みほぐし
骨折部の周囲に強い圧力をかけることは望ましくありません。分離症が確定していない段階での強いマッサージは、症状を悪化させるリスクがあります。
④ 「休めば治る」と自己判断してスポーツだけ休む
安静は大切ですが、どの程度の安静が必要かは骨折の進行度によって異なります。医療機関での診断なしに「少し休む」だけでは、見かけ上の改善と骨折の進行が同時に起きることがあります。
受診をおすすめするサイン(レッドフラッグ)
以下のサインがひとつでもあれば、早めに整形外科を受診してください。
腰の痛みが2週間以上続いている (スポーツをしている成長期では特に注意)
安静にしていても痛みが改善しない
夜間や安静時に強い痛みがある (腫瘍・感染症の除外が必要)
発熱を伴う腰痛 (化膿性脊椎炎などの感染を疑う)
足のしびれ・脱力・排尿困難がある (神経症状。すぐに受診を)
スポーツ中の強い衝撃(転倒・接触)のあとから痛む (外傷性骨折の確認が必要)
体重が減っている・疲労感が強い (全身疾患の可能性も考える)
腰椎分離症の診断にはX線(レントゲン)とMRIが必要です。初期の分離症はレントゲンで見えないことも多く、MRIが診断精度を大きく高めます。「レントゲンで異常なし」でも分離症の早期を除外できるわけではないため、疑いがある場合はMRI検査を依頼することをお勧めします。
自分でできること:痛みを増やさない体の使い方
腰椎分離症の疑いがある場合、まず医療機関での確認が先決です。その上で、日常生活やスポーツ復帰に向けて親子でできることを整理します。
① 腰の反り(前弯)を増やす動作を意識して減らす
分離症は腰椎が過度に伸展(反る)する姿勢で峡部に負荷がかかります。日常生活では「お腹を軽く引っ込めてお尻を締める」意識が腰椎の前弯を和らげます。ただしこれは意識すべき姿勢の方向性であって、常に力を入れ続けるものではありません。
中立位(負担が少ない)
○
峡部への
負荷:小
過度な反り(負担が大きい)
×
峡部への
圧縮・増大
図4|中立位の姿勢(左)と腰を過度に反らした姿勢(右)の比較。反り腰では椎弓峡部への圧縮が増す。
② 股関節前面(大腰筋・腸骨筋)のストレッチ
股関節前面の筋肉が硬くなると、骨盤が前に引っ張られて腰の前弯が強まります。この硬さを和らげることが腰椎への負担軽減につながります。以下の手順で行ってください。
片膝を床につけ、もう一方の足を前に出してランジの姿勢をとります(床の上にマットを敷いて行ってください)
骨盤を軽く後ろに倒す(腰を反らさない)意識で、体を前方向に移動させます
後ろ足の股関節の前面に伸び感を感じたところで止め、20〜30秒キープ
左右それぞれ2〜3セット行います
痛みが出る場合は中止し、医療機関に相談してください
股関節前面(大腰筋)のストレッチ
体幹
股関節前面
(伸ばす部位)
前膝は
90°以上に
しない
マットを敷く
20〜30秒キープ × 左右 2〜3セット
図5|股関節前面のストレッチ(ランジ姿勢)。後ろ足の股関節前面に伸び感が出るところでキープ。腰を反らさないことが重要。
③ 深呼吸と腹圧の意識(腹横筋のアクティベーション)
「腹横筋(ふくおうきん)」は体幹の最も深い層にあるインナーマッスルで、腰椎を内側からコルセットのように支える役割があります。息を吐きながら下腹部をへその下あたりから軽く引き込む意識を持つだけで、この筋肉が働きやすくなります。特に投球・キック・打撃動作の直前に腹圧を意識することが体幹の安定につながります。
腰椎の横断面:インナーマッスルと腹圧の仕組み
腰椎
腹横筋
(コルセット状)
腸腰筋
多裂筋
(背側)
腹横筋が収縮すると腹腔内圧が高まり、腰椎を全方向から支える
図6|腰椎の横断面(模式図)。腹横筋(ゴールド破線)はコルセット状に腰椎を囲み、収縮時に腹圧を高めて椎体を安定させる。
腹横筋を意識した練習方法:仰向けに寝て膝を立て、息を吐きながら「へそを床に沈めるように」下腹部を軽く凹ませます。この状態で呼吸を続け、10秒間キープします。5回を1セットとして、1日2セット程度から始めてください。腰に痛みが出る場合は中止してください。強く腹筋を締める必要はなく、ごく軽い引き込み感で十分です。
ただし、これらのセルフケアは骨折の進行度に応じた医療機関の指示を前提としてください。骨折の状態によっては、スポーツ中の運動制限やコルセットの使用が必要になることがあります。セルフケアはあくまで「医療的管理の補助」です。
当院の考え方
当院(藤井翔悟治療院 丹波篠山院)では、子どものスポーツ腰痛に対して次のような考えで対応しています。
まず、骨折の有無を確認せずに施術することはしません。成長期の腰痛は、骨折(分離症)の可能性が高い年代です。画像検査による診断は医療機関(整形外科)の領域であり、疑いがある場合は医療機関への受診を先行させていただきます。
当院が担うのは、医療機関での診断・治療方針が決まった後の段階です。具体的には「どこに余分な緊張が生まれているか」「体幹や股関節の使い方に課題がないか」を確認し、痛みが長引きにくい体の動かし方を一緒に考えていきます。
技術責任者・藤井翔悟(理学療法士)は、スポーツ選手の動作における負荷パターンに着目した施術を行っています。「痛む場所だけを触る」のではなく、腰椎に負担がかかりやすい体の使い方のパターンを全体から探ることを大切にしています。
施術の効果には個人差があります。「必ず楽になる」という保証はできませんが、原因の場所を丁寧に探すことを約束しています。ご予約・ご相談はお電話(075-748-1410)または予約ページからお気軽にどうぞ。
関連:ぎっくり腰・急性の腰の痛みについて
よくある質問
Q1. 子どもが腰椎分離症と診断されました。スポーツは完全にやめないといけませんか?
A. 骨折の進行度によります。早期(骨がまだつく段階)では、整形外科の指示のもとで一定期間のスポーツ制限が必要になることがあります。偽関節(骨がつかない段階)になっても、痛みと相談しながらスポーツを続けられるケースがほとんどです。北米のジュニアアイスホッケー選手を対象にした研究では、腰椎分離症と診断された25人のうち24人(96%)が平均約8週間で競技に復帰しています(Donaldson LD, 2014)。ただし、「何週間休めば確実に戻れる」という一律の基準はなく、画像での経過観察が必要です。
Q2. 子どもの腰痛に、大人と同じ整体を受けさせてもよいですか?
A. 成長期の骨格は成人とは異なります。骨折の有無が確認されていない段階での強い圧力や矯正は避けるべきです。子どもの腰痛で整体・治療院を検討する場合は、まず整形外科での診断を経てから、その結果をもって相談するのが安全な順番です。当院でも、医療機関の診断書・紹介状がなくても対応できますが、必要に応じて受診をお勧めしています。
Q3. 分離症が「偽関節」になってしまいました。手術は必要ですか?
A. 偽関節になっても、手術が必要なケースは多くありません。多くの場合、体幹強化・股関節のコンディショニング・動作改善などで痛みをコントロールしながら競技を続けられます。手術が検討されるのは、保存療法で改善しない強い痛みが続く場合や、神経症状(足のしびれ・脱力)を伴う場合です。手術の適否は整形外科専門医との相談のもとで判断してください。当院は手術を推奨も否定もしません。
まとめ
成長期のスポーツ腰痛は、大人の腰の疲れとは異なる仕組みで起きることがあります。特に腰椎分離症(疲労骨折)は早期に適切な対応をすることで、その後の選択肢が変わります。
「2週間以上続く腰の痛み」「安静にしても改善しない」「腰を反らすと特に痛い」という場合は、整形外科での画像検査を受けることをお勧めします。丹波篠山市内で子どもの腰痛についてご相談があれば、当院(藤井翔悟治療院 丹波篠山院、電話: 075-748-1410)にお問い合わせください。詳しい場所はご予約時にご案内します。
Tatsumura M, Gamada H, Ishimoto R, et al. Prevalence of curable and pseudoarthrosis stages of adolescent lumbar spondylolysis. J Rural Med. 2018;13(2):105–109. doi:10.2185/jrm.2967. PMID: 30546798.
Donaldson LD. Spondylolysis in Elite Junior-Level Ice Hockey Players. Sports Health. 2014;6(4):356–359. doi:10.1177/1941738113519958. PMID: 24982710.
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療など医療行為に代わるものではありません。施術の効果には個人差があります。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。